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Dolls…
第17章 悪魔のささやき
「…椿ちゃんっ!」
椎葉さんの台詞に傷付き耐えられなくなった私は2人から離れるようにその場から駆け出した。
これ以上、何も聞きたくない。
椎葉さんのそばにいたくないっ!
「待って、椿ちゃんっ!秋人、お前がここまで最低な奴だとは知らなかったよ!」
私を心配して後を追いかけてくれたのは安藤さんだけで
椎葉さんはその場から動かずに立ち竦んだまま。
全てを安藤さんに任せたかのように。
「面倒だろ…、泣いたところで、俺は何もしてやれねぇんだから…」
広い屋敷の廊下をアテもなく走った。
走ったところで何処へ行くのかもわからないのに。
気づくと私は地下のあのスタジオに向かっていた。
どうしてここに来たのかわからないけど、何処へ行っても事態は変わらないのだから。
「ぐすっ、う…」
電気をつけて、スタジオに置かれたパイプ椅子に座りながら泣きじゃくった。
椎葉さんが私の事を人形扱いしてるのなんかわかってたはずなのに、それがどうしてこんなに辛いのだろう。
改めて椎葉さんの口から聞かされた事実が刃物のように私の心に深く突き刺さって抜けない。
傷口は広がり化膿したみたいにズキズキ痛む。
私は馬鹿だ。
幾日も椎葉さんと過ごしてるうちに人形扱いから脱したと思い込んでた。
口は悪いが椎葉さんの優しさを感じてた。
私はただの人形モデルなんかじゃないのかもって思い始めてた。
だけど、違った。
椎葉さんが求めてるのは人形のモデル、意思も何も持たない死んだようなモデルだけ。
生きてる証なんて必要ない。
涙も、心も、椎葉さんには必要ない。