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Dolls…
第18章 パンドラの箱
それでも、何もかもを隠してる椎葉さんが憎かった。

私は椎葉さんにとってはただの人形のモデルなのだから、私に何かを打ち明ける必要はない。

だったら、私の事を見透かしてからかうのもやめて欲しいのに…。



「おいおい、俺の何が━━━━」



椎葉さんだけが私の全てを見抜いてる。

その一方通行さが、我慢出来なかった。




「椎葉さんのお母さん…」

「……何?」





それは、禁断の一言だった。

その単語を口にした瞬間、それまでの椎葉さんの口調がガラリと変わったからだ。

少し間を空けた後に聞こえた椎葉さんの声には焦りが感じられた。

聞いてはいけない、というのが一瞬でわかった。

これ以上聞いたら私はおろか椎葉さんまで傷ついてしまう。


だけど…


「安藤さんは、椎葉さんのお母さんの事については何も教えてくれませんでした…。自分から聞くより椎葉さんに聞けって」


だけど、止まらない。

止まらなくなった。



「椎葉さんばかり私の事を見透かして、何でもわかるって顔して、腹が立つんです…っ」



1度ついた勢いは止まらない。

椎葉さんに口答えするなんてよくある事だ。

恐々ながらも最初の頃に比べて口答えする回数は格段に増えた。


ただ、今のこの口答えは…、いつもとは違う。


洒落にならないラインを越えようとしてる気がした。



「私の部屋の前で喧嘩してましたよね…?安藤さんと2人で…」


ダメだと、頭の中ではわかってるのに…


「椎葉さんのお母さんの事と私と、何か関係でもあるんですかっ!?」


止まらない…。



「そうやって散々私の事を見透かしてるなら、私にだって━━━━━」



私にだって椎葉さんの事を少しでも教えて欲しい。

弱いところや辛いことを吐き出して欲しい。

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