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Dolls…
第19章 泣きながら、あなたを…
あ…っ、ど、どうしよう…。
「ち、違…、何でもありませんっ!」
「何でもないことないって!」
無理に背筋を伸ばしたせいで傷とバスローブが擦れてその摩擦で傷が余計に深くなって出血したんだ。
それに身体中の水分を吸収して濡れてるバスローブ。
微量の血でも滲みやすくなってたのであろう。
「こ、これは本当に…っ」
「手当てした方がいいっ!あ、秋人呼んでくるからっ!多分もう仕事部屋に戻ってると思うからっ!」
椎葉さん…?
その名前を聞いた瞬間、私の心臓が再び激しく動き出した。
━━━ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ
やだ、今は椎葉さんの顔は見れない。
見たくない…っ!
自分の気持ちすらちゃんとわかってない。
この動悸も、熱い体も、全部椎葉さんのせいなのに、今は椎葉さんに会いたくない!
「や、やめて下さいっ!」
私の手を離し椎葉さんの元へ行こうとする安藤さん。
今度は逆に私が安藤さんの手を掴んでその動きを止めた。
今は、椎葉さんに会えない…。
「な…っ、どうしてっ!?だって、怪我が…っ」
「お、お願いしますっ。今は、椎葉さんに会いたくないんです…」
震える声でお願いする私に安藤さんは驚いていた。
声を震わせ、顔を真っ赤に染めて、今にも泣き出しそうな顔で必死に安藤さんを止めた。
「つ、椿ちゃ…」
そんな私の様子を見て安藤さんは何かを察したかのようにその場に立ち止まってくれた。
こんな醜態を見せたんじゃ安藤さんが怪しむ。
せっかく必死に隠そうとしたのに、これじゃ私と椎葉さんの間に何かがありましたって言ってるようなものだ。