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Dolls…
第21章 あなたが教えてくれた
「何だ?」

背中越しに椎葉さんの返事が聞こえた。


"何だ?"と、言われても咄嗟に名前を呼んでしまっただけでこの先の言葉なんて考えてない。

「あ、あの…」

ただもう1度、ちゃんと私を見て欲しかった。

悪足掻きだってわかってても…、もう1度椎葉さんと話したかった。

私の目を見て、私の名前を呼んで。


「何だと聞いてるんだ」

こちらを振り向くことなく再び私を問いただした。

待って欲しくて名前を呼んだ癖に、そこから先の言葉が思い浮かばず

モタモタする私に椎葉さんは苛ついてるみたいだ。

私を問いただす声が心なしかイライラしてるように聞こえた。


「あ…」

ど、どうしよう…。

何か話さなきゃ…。

まるで他人のように遠くに感じる背中を見ながら私の頭は必死になって言い訳を探した。

早く何か言わなきゃ椎葉さんは行ってしまう。

もし今、椎葉さんが出て行ってしまったらもう2度と会えない、そんな気がする。

そんなの嫌だ…。

椎葉さん━━━━━っ!



「用がないなら俺は…」

「あ、安藤さんが…っ」

「尚人がどうした?」

「あ…」



安藤さんの言葉が脳裏に過る。



"俺と一緒にこの屋敷を…"





━━━━━もし

もし私が安藤さんに言われた台詞を椎葉さんに言ったらどうなるんだろう?

もし、私が安藤さんとこの屋敷を出ていくと知ったら椎葉さんはどうするんだろう?

シュウちゃんの時みたいに止めてくれるの?


もし、私が安藤さんと…。


「尚人がどうしたんだ?さっさと言え」


椎葉さんの声に苛々が募ってきている。

口ごもる私に腹を立てているのだ。



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