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Dolls…
第22章 遠い街角
無駄に大きいと感じたシャンデリアと、学校の体育館みたいに高い天井。

人形だらけで不気味だった部屋と、椎葉さんの手によって作られた人形達。

大きくて、私1人じゃ場所に持て余してたベッド。

だけど、窓から見える山の景色だけは好きだった。

故郷の山を思い出せていたから。

私が今日まで正気を保っていられたのはこの景色があったからだろう。






どれもこれも、今日でお別れ。

もう2度と戻って来れない。


「じゃぁ、行こっか」

「……はい」


安藤さんに声をかけられて私はベッドから立ち上がり、安藤さんと共にこの部屋を後にした。

地獄のようだったこの部屋。

もう2度と…、戻って来ることはないんだ。






さようなら。













安藤さんと2人で長く歩き慣れた廊下を歩いた。

早くこの屋敷での事を忘れたいのに、忘れたくないかのように一歩一歩踏み締めながら。

「しかし、椿ちゃんの荷物少ないね。本当にそれだけ?」

小さな紙袋1つを持つ私を見ながらクスクス笑っている。

「はい。…まぁ」

安藤さんはズボンのベルト通しに引っ掻けた小さな鞄が1つ。

私より通い慣れたような足取りの安藤さんの後を口数少なく付いて行く。

安藤さんは私よりこの屋敷には詳しいだろう。


「あの…、安藤さん」

「何?」

「その…、椎葉さんは?」

「秋人?」



今日でこの屋敷とも椎葉さんともお別れだ。

酷い目には遭わされたけど、最後に挨拶ぐらいは…、と思ったが…。

「ほら…、最後に挨拶とか…」

「あぁ。さっき椿ちゃんを迎えに行く前に作業部屋を覗いたら、朝早くから人形作ってた。"挨拶とかしてやらねぇの?"って、聞いたら"忙しいからいい"って。マジで冷てぇ」


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