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Dolls…
第22章 遠い街角
私の方へと駆け足で歩み寄る椎葉さんの手には大きな紙袋が握られていた。
「椿…っ」
私の前まで駆け寄った椎葉さんは私の目を見つめながら…、何かを言いたそうな表情を浮かべていた。
椎葉さん…。
どうしてここに…?
見送りにきてくれたの?
それとも、まさか…、私を引き止めに来てくれたの…?
「椎葉さん…?」
あれだけ心に決めたはずなのに、いざ椎葉さんの顔を見たら安藤さんとここを出て行くと決めた決心が鈍ってしまいそうだ。
もし、今椎葉さんに引き止められたら…、私は椎葉さんの手を取ってしまう。
例え女性としてじゃなく人形のモデルだけの存在だとしてもいいから、このままずっと椎葉さんの傍にいたい…。
椎葉さんを前にして今にも泣き出しそうな気持ちを必死に我慢した。
「何で、ここに…?」
「……いや」
椎葉さんの目は明らかに泳いでる。
何かを言いたそうで、その言葉を必死に飲み込んでるような表情を浮かべている。
「…ほら」
そう言うと、椎葉さんは持っていた紙袋を私にグイッと手渡した。
まるで私に押し付けるように、私の胸元辺りに紙袋を押し当てて来た。
「……これ」
「お前のだ」
「え…?」
"お前のだ"って、この紙袋は…?
おずおずとその紙袋を両手で受け取った瞬間、紙袋の中身がチラリと見えた。
見えた紙袋の中身は…。
「これ…」
「お前がここに着たときに着ていた服とスケッチブックと携帯だ」
…椎葉さんに脱がされた私の服。
もう捨てられたかと思ってたのに…。
携帯も…、ここは圏外だから意味がなかったから部屋の何処かに置きっぱなしにしてたと思ってたけど、いつの間に椎葉さんが…。