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Dolls…
第22章 遠い街角
ただの人形のモデルとか言ってたくせに、どこまでも私の気を使ってばかり。
酷くしたと思えばこんなふうに優しくもしてくれる。
決して表には出さない椎葉さんの優しさ。
それは、誰よりもわかってたはずなのに…。
けど、だったら私のアパートは今どうなってるんだろう?
身辺調査をするぐらいだから権力を乱用して勝手に解約されてるのかな?
家賃や光熱費の引き落としはどうなってるのかな?
けど、よく考えたら椎葉さんが傍にいない今は誰の家に行こうが何処へ帰ろうがもうどうでもいい。
もう、知ったことじゃない。
窓から流れる景色は山奥の森からは一変してだんだん都会的な風景に変わっていた。
私の心は、あの山奥の屋敷に残して来たみたいに感じる。
車を走らせる事、30分。
そこは見たことのない高級住宅街。
豪邸と呼ぶに相応しいようなお城のような家、昔ながらの日本家屋が建ち並ぶセレブ御用達のような住宅街にタクシーは入っていく。
な、何よここ…。
もしかして、安藤さんの家ってこんな高級住宅街にあるの…?
窓から見える大きな家に目を奪われて呆然と眺めていると安藤さんが
「あ、そこの角を曲がった所で下ろしてください」
「はい」
運転手さんとそんな会話をしていた。
この辺で下りるって事はやっぱりこの辺に住んでるんだ。
やっぱお金持ちにはお金持ちの友達が出来るんだ。
類は友を呼ぶってやつかな?
「あの、安藤さんの家もこんな…」
「まさか!こんなでっかい家に住める訳ないじゃん!俺はマンションで1人暮らし」
…それを聞いて少し安心した。
椎葉さんのあの豪邸でも落ち着かなかったんだから、広い屋敷はさすがに懲り懲りだ。