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Dolls…
第23章 危険な香り
安藤さんと椎葉さん。
例えるなら月と太陽、陰と陽。
全く正反対のこの2人。
だけど、正反対だからだろうか…、腐れ縁の幼馴染みらしい。
椎葉さんは何も寄せ付けない、生気を感じない陰のオーラ。
近寄るもの全てを飲み込んでしまう、そんな人だった。
近寄りがたくて怖くて、何度もあの闇に飲み込まれそうになった。
だけど、その闇の中に見える一筋の光のように
一瞬だけ見せてくれる優しさや激しさに私は酷く惹かれたんだ。
「ほらほら、これ!この服なんかいいんじゃないかな?」
「え?」
そう言いながら安藤さんは私に自分の携帯を見せてくれた。
画面を見るとそこには今時のギャル風の服が掲載されているページだった。
細身のスキニーに真っ赤な文字で大きな英文プリントが施された真っ白なロングニット。
「……これは?」
「やだなぁ!椿ちゃんの服じゃん!」
「あ、あぁ…」
とある日の昼下がり、リビングのソファでコーヒーを飲みながら安藤さんとの談笑を楽しんでいた時の事だ。
安藤さんは私の服をいろいろと取り揃えようとしてくれてる。
だけど、大の男が1人でショップに入るのは恥ずかしいらしくこうやってネットショッピングで購入しようとしてくれている。
ネットなら誰かと顔を合わせる事はないから。
「あーでも、椿ちゃんなら清楚系の方が似合うかな?」
ウキウキと私の隣に座りながら私の服を選んでくれている。
…何だか私より楽しそう。
安藤さんと一緒にショップに買いに行けば済むのに、今の私にはそんな気力はなかった。
現に今もこうやって空返事しか出来てないのだから。