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Dolls…
第23章 危険な香り
「椿ちゃんはどんな服がいい?普段はどんな服着てたの?いつまでも俺のスウェットやジャージじゃ嫌でしょ?」
「……シンプルなファッションでした」
「じゃぁ、カジュアルな方がいいかな?」
ここに来て1週間。
安藤さんは嫌な顔1つせず、私の面倒を見てくれている。
ご飯は何がいい?とか、何か欲しいものはない?とか、とにかく私を気遣ってくれている。
椎葉さんの屋敷で傷ついた私を癒そうとしてくれている。
なのに、私の心はここになかった。
まるでふわふわと宙に浮いてるようだった。
油断すれば頭を過るのは椎葉さんの事ばかりだった。
忘れよう忘れようとしてるのに、その度に思い出してしまう。
そして、心の奥が締め付けられそうになる。
全然忘れられない。
それどころか、前にも増して椎葉さんへの想いが強烈なものになっていく。
会いたい…。
声が聞きたい…。
触れられたい…、と。
「椿ちゃん?」
「━━━━あっ、はいっ!」
突然名前を呼ばれハッと我に返った。
あ、そうだ。
私今、安藤さんと…。
「とりあえず、適当に俺の趣味で注文したよ。気に入らなかったら言ってね」
「あ、いえ…」
そうだった。
いくら願ってもその夢はもう叶わない。
私は椎葉さんに振られて今は安藤さんと暮らしてる。
その安藤さんは私の心の傷を癒そうとしてくれてる。
「あの、代金は…」
「気にしないで!俺が好きで買ってるんだから!」
「でも、さすがに心苦しいので…、仕事が見つかったら必ず返します」