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Dolls…
第23章 危険な香り
今頃椎葉さんは人形を作ってる。
あの山奥の広い屋敷で1人で…。
椎葉さんは私がいなくなって少しでも寂しいと感じてくれてますか?
それとも、ただ単に暇潰しの人形がいなくなって退屈してますか?
それとも…。
その後、安藤さんは携帯を片手にネットで私の服を選んでいた。
ワンピースやスカートやちょっとした小物類まで。
別に私はそこまでお洒落じゃないんだけどな。
そして、"せめて夕飯を作る"という私の申し出も断りピザをデリバリー。
お洒落なダイニングキッチンで安藤さんと一緒にピザを食べるが、ここに来てからあまり食欲が湧かない。
慣れない環境ということもあるが、何より椎葉さんがいないという現実が1番辛かった。
それにここのところ、夜もあまり眠れてない。
もう会えないとわかってるのに、夢の中会ったって目覚めたときに辛いだけだ。
ピザを食べながら安藤さんは他愛ない世間話を聞かせてくれたが、私はどこか上の空で安藤さんの話に"はい、はい"と相槌を打つしか出来なかった。
ムリヤリながら胃袋にピザを詰め込んだ。
空腹は感じてるが食欲がないが、いつまでも食べないままじゃ体に悪いし。
迫り来る吐き気を抑えながらまるで流れ作業のように口にピザを頬張り続けた。
そして━━━━
「…ご馳走さま」
「椿ちゃん、先にお風呂どうぞ。片付けは俺がするから」
「……はい」
本当は居候の私が後片付けをするべきなんだろうけど、先程の怒鳴り声が堪えたのか大人しく安藤さんの言うことを聞くしかなかった。
…何だか、親しみやすかった安藤さんが少し怖く感じた。
安藤さんの顔を見ることが出来ないまま私はそそくさと席を立った。
安藤さんへの恐怖と、安藤さんへの気持ちを利用しようとした自分の身勝手さへの罪悪感が入り交じって何だか気まずい。