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Dolls…
第23章 危険な香り
自分への自己嫌悪のせいで安藤さんの顔が益々見辛くなってしまった。

背伸びをして私の横を通ろうとする安藤さんの姿をしっかり見ることが出来なかった。

……居候とは言えこれじゃあまりにも不自然。

でも、これも自業自得だ。

私の脇を通り抜けて浴室へと向かおうとする安藤さん。


「あ、テレビ消しちゃったけど何か好きなものがあれば見てていいから」

「あ、はい…」

「それと、冷蔵庫は勝手に開けてくれていいし。何でも好きなの飲んでて。…って、ほとんど酒だけど」

「はい…。すいません、頂きます…」



……ダメだ。

安藤さんとの受け答えだけでいっぱいいっぱいだ。

安藤さんの目どころか顔すら見れない。

俯きながら安藤さんの声に当たり障りのない返答を返すしか出来なかった。

気まずさと自己嫌悪で自分が嫌になる。


安藤さんが浴室に消えたのち、私は静まり返ったリビングのソファに腰かけた。

お風呂上がりで体が火照ってるせいか何だか少し…、眠い…。

柔らかなソファに腰かけ背中を背もたれに預けて、全身の力を一気に抜かせる。



何だか…、緊張しすぎたせいで疲れた。



いや、ここ最近…、ここに来てから椎葉さんの事を思い出し過ぎて、そのせいなのかはわからないが心が疲れ切ってしまってる。

椎葉さんの事を思い出して、目には見えないように心だけが泣き続けてる。

椎葉さん、今頃何してるんだろう?

多分また人形を作ってるんだろうな。

いつもならお風呂上がりは決まって椎葉さんが私の部屋に来て、髪の毛を乾かしてスタイリングしてくれたり、私の肌を気遣ってスキンケアしてくれたり

過保護みたいに扱われてたっけ。

…まぁ、大事な人形のモデルだから仕方無いけど。






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