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Dolls…
第24章 秘密の人形
安藤さんに名前を呼ばれただけで心臓が激しく波打つ。
だけど、この鼓動は椎葉さんの時に感じた鼓動とはまた違う。
愛しくさも、恋しさも感じない、ただただ恐怖しか感じない。
「椿ちゃん、今でも秋人の事が好きなんだね」
「━━━━っ!」
図星だ。
安藤さんはしゃがみこみ私に背中を向けたままだ。
私も立ち去ろうとしたところを呼び止められたせいか、進行方向に体を向けたままでそこから動けなくなっている。
私も安藤さんに背中を向けたまま。
「だ、だったら…、何ですか?」
私は奈々さんとは全くの別人なのだから誰の事を愛してようが安藤さんには関係ない。
安藤さんだって、私が椎葉さんの事を好きだって事は知ってるはずだ。
「秋人の事はやめておけ、諦めろって忠告してあげたのに…」
…以前、椎葉さんの屋敷で安藤さんにそう言われた。
その忠告を聞かずに私は勝手に暴走して椎葉さんに告白して見事に振られた。
あの事に関しては安藤さんの忠告を無視した私が悪い。
安藤さんは私の事を思って忠告してくれたのに、私はそれを聞き入れずに…。
「あ、あの事に関しては…」
忠告してくれたことに感謝しろとでも言うのだろうか…。
私が椎葉さんに告白さえしなければ今も椎葉さんのそばにいられたのだろうか…。
「だけど、私…、後悔してません…」
確かに椎葉さんに振られたけど、自分の気持ちを伝えたことに悔いはない。
悔やむとしてはこんな人に捕まり監禁されてること。
「くすくす…」
背後から安藤さんの含み笑いが聞こえた。
それはまるで、椎葉さんに振られた私を嘲笑うかのような笑いだった。
私は何も知らずにこんな人を信じてたのかと思うと怒りのあまり顔がカァッと紅潮した。
我ながら自分が情けない。