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第25章 最後の真実

椎葉さんの事を知る権利。

すると、車はゆっくりと動きを停めた。

赤信号に差し掛かったようだ、が

サイドブレーキを引いた椎葉さんがちらりと私の方を振り返った。

対向車のライトがフロントガラスから差し込み、逆光になり椎葉さんの顔がちゃんと見えない。

だけど、うっすらと見える椎葉さんの表情は真っ直ぐに私を見据えていた。







「椿、お前には何もかも話そう」

「………っ！！」







何かを決心したかのような椎葉さんの真剣な眼差しと表情。

その表情に私の心臓がこれまでにないくらいにドキドキと高鳴った。


好奇心？高揚感？恐怖？

何とも言えない胸の高鳴りで体が熱くなる。


「ここじゃまだ言えない」

「え？」


すると、赤信号の目がパッと青に切り替わった。

椎葉さんは前を向き直しサイドブレーキを下げる。

アクセルを踏み込み車は徐々に加速して行く。


「そんな…、簡単に済む話じゃない…」





真っ黒な空、遠くの方で雷鳴が響いている。

そして、フロントガラスには大きなの雨粒がポトポトと染みを作って行く。

遠くで響く雷鳴と雨脚の音が私の不安を煽る。


「あの…」


その一言を最後に椎葉さんの口は閉ざされてしまった。

何も言わない椎葉さん、崩れ行く天候、無音の車内にはエンジン音だけが響いていく。

シチュエーションとしてバッチリ過ぎて…、思わず笑ってしまいそうになった。




そして、少しずつ少しずつ…、真実が明らかになって行く。

真実が足音を立てて近づいてくる。

なのに…


もう少しで望んでいた真実に辿り着けそうなのに、私の中の不安と恐怖は大きく膨れ上がって行く。

まるで、自分で望んだ真実に自分が飲み込まれそうになっていた。