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Dolls…
第26章 Dolls…


「俺の親父も人形師だった。

まぁ、親父は俺と違って雛人形や五月人形と言った日本人形専門だったけど。

親父は俺に後を継がせたかったみたいで、俺は毎日のように学校から帰ったら人形作りの練習をさせられてた。

友達と遊びに行く時間なんてなかったし、友人らしい友人もいなかった。

俺は一人息子で兄弟がいなかったから、そう言うもんだと思ってたし、父親の事は尊敬してたから嫌々ながら父親の仕事の手伝いをしながら人形作りを教わってた。

…最初から人形師になりたかった訳じゃねぇんだ」



「けど、親父は作品には一切の妥協を許さない人で、失敗すれば当然のように叱られてた。

酷いときには竹刀で殴られた事もあった。

これは後から知った事実だが、親父の人形作りは何代も前から受け継がれてた椎葉家の伝統だったらしい。

だから、何としてでも俺を一人前に育てたかったんだろうな」



「でも、毎日のように叱られて竹刀で殴られて…、まだ年端も行かねぇガキの俺には毎日が地獄だった。

そんな俺の唯一の支えが母親だったんだ。

親父に怒られた俺をいつも庇って慰めてくれた。

母親は伝統を重んじるより、俺の意思を尊重してくれてた。

俺の生きたい道を歩め、って。

いつも笑顔で俺に接してくれてた。

あの頃俺の回りには、鬼みたいに厳しい父親と家事をするだけのロボットみたいな家政婦しかいなかったから」





ここまでの会話を私は黙って聞いていた。

話を聞く限り椎葉さんがお母さんを恨む理由なんて何処にもない。

それどころか話をする椎葉さんの目は穏やかで優しくて、とてもじゃないがお母さんを恨んでるようには見えなかった。



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