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Dolls…
第26章 Dolls…
「俺が8歳の頃に母親が倒れた。

元々病弱で心臓に病気を抱えてたんだ。

俺が赤ん坊の頃にも何度か倒れて入院してた時期もあったらしい。

でも、俺は赤ん坊だったから何も覚えてない。

そんな母親の姿を見るのはとにかくショックだった。

寝込んじまった母親が心配で学校も休みがちになった。

友人はいなかったけど授業を聞いてるのは好きだったんだ、俺。


…確か尚人と友達になったのもそれくらいだったはずだ。

俺が休んでる間のプリントやらノートやらを家に届けに来るようになったんだよ。

まぁ、こんな変なガキの家や母親を見たかっただけだろうけど」



「結局、母親は入院することになったんだけど、その頃から俺は親父に反発するようになった。

仕事優先で母親の見舞いにすら来なかったから。

確かに親父の作る人形は立派だが大事な家族を蔑ろにする親父が許せなかった。

その事に関して母親は文句の1つも言わなかった。

親父は立派な仕事をしてるのだから、とずっと親父を庇ってた。

けど、俺はだんだんそんな親父が許せなくなって仕事の手伝いも人形作りもサボるようになった」





安藤さんから聞かされた話しは全て本当だった。

安藤さんから聞かされた話と照らし合わせても全てが合致する。


…本当であって欲しくなかった、こんな過去。




「母親の病状は良くならず、日に日に悪化して、とうとう━━━━」





そこまで話すと椎葉さんは拳をグッと握り締めていた。

悔しさを噛み締めるように。

まだ子供で何も出来ない自分を嘆くように。

私の瞳にも知らぬ間に涙が滲んでいた。







「椎葉さん…」








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