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Dolls…
第26章 Dolls…
「母親は、昔から親父の人形を取り扱ってた老舗の一人娘だった。

その一人娘の母親に一目惚れした親父は、母親の旦那の浮気をでっち上げて離婚に追いやった。

周りは誰も親父の仕業だと気づいてなかったし、疑いもしなかった。

金にモノを言わせて子供は旦那に引き取らせ自分はさっさと母親に近付いて半ばムリヤリに結婚。

騙されたとは言え旦那に裏切られ子供も奪われて…、失意のドン底だった母親は親父の甘い言葉に騙されて結婚しちまったんだ…。

騙されてるとも気付かずに…」


「結婚した翌年に俺が産まれた。

けど、俺が産まれたと同時に落ち着いていた心臓病が再発。

跡継ぎを産んだ後の病弱な母親は親父に取っては邪魔なだけだった。

だから、見舞いにも行かず母親が危篤の時ですら病院に駆けつける事もなかった。

母親の最期を看取ったのは俺だけだ…」




「酷い…っ」

まるで鈍器で後頭部を殴られたような気分だった。

自分の私利私欲の為だけに1つの家庭を壊してその代償を背負うこともなく全てを投げ出したんだ。

椎葉さんのお母さんの気持ちを考えたら…、惨すぎる。



「危篤状態の中、最期に幸せだった頃の夢か幻でも見てたんだろうな。

昔の旦那と子供とで幸せな毎日を送ってたあの頃の夢だ…。

そりゃ、俺が産まれたことも俺が自分の息子だって事も覚えてないのも無理はない…」





椎葉さん…っ。

俯きながら寂しそうな表情を浮かべる椎葉さんの顔を見て胸が痛くなった。



いくら危篤状態だったとは言え、幼い子供が母親からそんな台詞を聞かされたら…、どれだけショックか。

そして、それが最後の言葉だったなんて…。








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