この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Dolls…
第5章 静かな晩餐
部屋を抜けて、広い廊下を一緒に歩いた。
椎葉さんの横に並ぶ訳じゃなく、おどおどしながら椎葉さんの後を着いていく。
広く薄暗い廊下を歩きながら辺りをキョロキョロと見渡す。
廊下に窓はいくつかある。
窓から見える景色は山々の木々ばかりだ。
この窓を突き破れば外へ逃げられるけど、推定3階のここから飛び降りたら大怪我してしまう。
それにこの屋敷の部屋は天井がバカみたいに高いし、3階の割りにはめちゃくちゃ高い。
下手すりゃ即死だ。
…今この場で椎葉さんを殴って逃げようと思えば逃げられるけど、女の力で男に勝てるわけがないし、もし脱出に失敗したら今度こそ本当に殺されるかも知れない。
長い廊下を渡る途中も、長い階段を下りる途中も、私の頭の中は逃げることしか考えなかった。
とにかく、生きてここから逃げ出す方法。
多少のリスクは覚悟しているが、確実に逃げ切れる方法を…。
椎葉さんに気づかれぬよう、そんな考えを頭に巡らせていると。
「━━━━━着いたぞ」
「え…?」
ハッとして顔を顔を上げた。
脱出の事で頭がいっぱいでついボーッとしちゃってたけど。
椎葉さんの声でハッとして顔を上げると、そこは…
「こ、ここ…」
「我が家のダイニングへようこそ」
そこは、ドラマや映画でしか見たことないような大きなテーブルに、綺麗なキャンドル。
照明はやや薄暗いがキャンドルの炎がテーブルや食事だけをてらしだして、何とも幻想的な画になっていた。
テーブルにはシルクのような真っ白なクロス。
「どうぞ。席は用意してある」
驚きのあまりダイニングの入り口で立ち尽くす私に椎葉さんが手を差し出してきた。
まるで、エスコートするかのように。