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Dolls…
第5章 静かな晩餐
手…?
あ、そっか…、席に案内してくれるのか…。
っていうか、私、こんな格好で食事なんて…。
手を差し出す椎葉さんに見とれてしまって、不覚にも胸がドキッとした。
目眩さえ覚えた。
まるで映画のワンシーンみたいで、現実味がなくて…。
ドクンッ
「━━━━━━━っ!」
椎葉さんの手を掴もうと手を差し出そうとした瞬間にハッと気づいた。
「……け、結構です」
差し出しかけた手をスッと下げた。
割れに戻ったのだ。
「急にどうした?」
……何やってんのよ、私は。
こんな男に一瞬でもドキッとしてしまうなんて。
この男が私にどれほど酷いことをしてきたか。
不覚にもこの雰囲気に飲まれてしまい、自分の服装を気にしたり、こんな男の手を掴もうとしたり。
「余計な事をしたな。あっちの席だ」
薄暗くて、キャンドルの炎だけに包まれたこの雰囲気に飲まれて、あの男の瞳に見とれて…、バカじゃない。
椎葉さんが用意してくれたであろう、料理が置いてある席に移動した。
無論、椎葉さんにエスコートされるわけでもなく。
「さて。飲み物は何がいい?ワインか?」
「私、お酒は…」
「だったら、ミネラルウォーターでいいか?生憎、ジュース類は苦手で置いてないんだ」
「…お酒以外なら何でも」
こんな人とお酒なんて怖くて飲めない。
酔い潰れた私に何をして来るかわからない。
ワイングラスを持つその姿を見ながら、私の心は騒ぎ立てていた。
先程の余韻だろうか?
認めたくはないが、この人は本当に画になる姿をしている。
隙のない身のこなしに、白いカッターシャツが良く似合ってる。
細身の癖に背も高いし。