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記憶にない初恋、その追憶
第3章 承-2
最初はそれでも、秘め事は古い家に二人きりの時だけだった。
家族の気配が無くなるまでは、もうどうでもよくなっていたレッスンの時間。
私の教本を捲るのに手を伸ばすのが同時だった。指先が触れただけでも私の頬は染まり、俯いてしまう。
こんなに好きな人がそばにいて、集中なんて出来るはずがない。
彼は仕方なさそうに私と席を替わり、私でも知っている有名な曲を弾いてくれた。
いつまでも耳に残る、優しいノクターン。
オーケストラで聞いた、G線上のアリア。
続いて眠りに誘われ閉じていた私の目を覚ます、幻想即興曲。
憧れの曲が紡がれる手元に高揚し、今度は身を乗り出す私を横目に、彼は口唇を上げた。
それは服の隙間からの愛撫の間、私の反応する場所を見つけた時の笑みに似ていた。
不謹慎なことに、私は200年前の偉大な音楽家の作った曲に身を焦がされ、未完成な子宮が疼いている。