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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
橘乃の居室は今、障子戸をすべて開け放っている。濡れ縁越しに見渡せる庭は今、紅葉が盛りであった。赤だけでなく、黄金色に染まった小さな葉が地面に無数に散り敷いている。二本の樹が寄り添い合うようにして立っているその様は、どこか仲睦まじい夫婦(めおと)を彷彿とさせる。
我が身も嘉宣の側に終生いることができたならと願わずにはおれなかった。視線を少し動かすと、片隅に女郎花が群れ固まって咲いている。華やかさはないが、その慎ましい佇まいが昔から橘乃は気に入っていた。
我が身も嘉宣の側に終生いることができたならと願わずにはおれなかった。視線を少し動かすと、片隅に女郎花が群れ固まって咲いている。華やかさはないが、その慎ましい佇まいが昔から橘乃は気に入っていた。