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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
「殿がそのようなことを仰(おつしや)るとは存じませんでした」
 どうしても笑みが零れてしまうのは止めようがない。
 嘉宣が憮然とした面持ちで言った。
「何だ、俺が歌もろくに読めず気の利いた科白一つ言えぬ男だと思うか? 俺はそこまで無粋ではないぞ? これでも歌くらい嗜んでいる」
 まるで子どもが得意技を披露するような顔で、胸を張っている。その様がおかしくて、橘乃はまたクスリと笑みを洩らす。
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