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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
「何を泣いている」
 嘉宣が橘乃の涙に愕いたように声を上げた。
「だって、あまりにも幸せで」
「かなわんな。女は哀しいときだけでなく、嬉しいときにも泣くのか。さりながら、何も泣くほどのこともなかろうに」
 呆れたように肩をすくめる嘉宣だった。
「いいえ、心からお慕いする方のお側にいられるのは、女にとってはいちばんの幸せにございます」
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