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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
「そうか、他人の作った歌でそれほど歓ぶのなら、今度は是非、自分で作らねばならぬな。だが、生憎と俺はそういった風流心が欠片(かけら)ほどもないのだ。そなたのためなら、ない知恵を振り絞ってみるとするか」
嘉宣が戯れ言めいて言う。
橘乃はあまりの幸福に目眩がしそうだった。熱いものが瞼に込み上げてくる。
長閑な昼下がりで、庭には晩秋の陽が差し込み、朱や黄に染まった紅葉が穏やかな陽光に照り映えている。女郎花の花がかすかな風にそっと揺れた。