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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 意外そうな表情の嘉宣に橘乃は首を振る。
「いいえ、一輪だけで良いのです。折角一生懸命に咲いているのに、途中で摘んでは可哀想ですから」
「なるほど」
 嘉宣は秋の陽に眩しげに眼を細めた。
「女郎花の花は、子どもの頃から大好きなのです。春に咲く牡丹のような華やかさはございませんが、いつも凜として咲いているところに心惹かれるのです」
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