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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
 嘉宣が手を差し出しても、橘乃は渡そうとはしない。いつも従順で嘉宣の意に逆らったことのない橘乃にしては珍しいことだ。
「いいえ、私は春瑶院さまのお心をお疑いするような真似は致したくございませぬ」
 橘乃が毅然として言うのに、嘉宣が固い表情で言った。
「そなたは、まだ母上の怖ろしさを知らぬ」
 嘉宣は呟くように言うと、橘乃にもう一度言った。
「良いから、その薬を渡すんだ」
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