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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章  【弐】
「お、お方さまッ。あれをご覧に」
 橘乃もまた声を発することすらできなかった。
 金魚鉢の中でたった今まで優雅にひらひらと泳いでいた金魚は赤瑪瑙を思わせた。それらの金魚たちが無惨にも皆、白い腹を見せて引っ繰り返っている。
「やはり、毒であったか」
 嘉宣は当然の結果だと言わんばかりに呟いた。後はもう、金魚鉢を振り返りもしなかった。
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