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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第4章 【弐】
「殿―。どうかお心をお鎮めになって下さりませ。橘乃はこうして無事でおりまする。それゆえ、どうか今回のことは無かったものと思し召しあそばしませ」
橘乃の取りなしにも、嘉宣はますます苛立ちを募らせるばかりだ。
「これで、そなたも判ったであろう。あの女に情けなど無用。―それにしても、まさか母上が橘乃まで狙うとは思うてもみなんだ。橘乃の腹に宿りし子は、母上の孫ではないか。母上はこの俺だけでなく、俺の血を引く子までをも憎むおつもりか」