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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
 姉を訪れて、かれこれ一刻近くも待たされた苛立ちもこの花を見ていると、しばし忘れた。見憶えのある侍女の貌をひととおり順に思い出していったが、このような細やかな気遣いのできる侍女は、ここにはいなかったはずだと考える。少なくとも、姉の許には。
 嘉宣は、しばしばこの姉の許を訪れた。腹違いの弟妹は数え切れないほどいるが、同じ母から生まれたのは、この姉と八つ下の妹のみであった。
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