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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
嘉宣が幾度も頷く。橘乃はますます声を震わせ、涙ながらに訴えた。
「橘乃は日々、不安でなりませぬ。いつまた吾子の生命が狙われるかと考えただけで、生きている心地が致しませぬ。昼間、浅い眠りに落ちても、悪夢を見てうなされる始末。このままでは腹の子の成長にも障りましょう。どうか殿、お願いでございます。この不安を取り除いて、私を悪しき夢からお救い下りませ」
身を揉んですすり泣くその様は、さながら一輪の花が雨に打たれて、萎れているようだ。