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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「それでは、お言葉に甘えて申し上げます。吾子の生命を脅かす可能性があるものはすべて取り除いて頂きたいのです」
 しばらく水を打ったような静寂が当たりを包み込んだ。
「―母上のことか」
 唐突にその沈黙が破られても、橘乃は身じろぎ一つしなかった。ただ漆黒の艶めく瞳を嘉宣に向けているだけだ。薄い闇の中で、橘乃の黒い瞳が猫の眼のように煌々と輝いていた。
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