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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 橘乃が好んでいつも焚きしめる香のかおりが彼を包み込み、その香りを深く吸い込んだ瞬間、くらりと酒に酔ったような酩酊感が襲った。
「どうか、殿。私と腹の吾子を安心させて下さりませ」
 この蠱惑的な声は、嘉宣の脳髄を痺れさせる。嘉宣は獣のように荒い息を吐き、低い唸り声を上げながら、夢中で橘乃の身体を貪った。
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