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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 橘乃を形づくるすべての箇所が、今もいや、以前よりいっそう彼を虜にし、溺れさせる。
 嘉宣は情動に耐えかね、橘乃をそのまま褥に押し倒し、覆い被さった。
「母上さまさえ、この世から消えておしまいになれば、私たちの子が―私と殿の間に生まれる子がお家を継ぐ跡取りとなることができるのです」
 橘乃が嘉宣の耳許でもう一度、囁いた。生温かい吐息が嘉宣の耳朶をくすぐる。
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