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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 その日、木檜藩上屋敷に思わぬ訪問者があった。既に師走も半ばを迎えており、奥庭の椿が艶やかな真紅の花をたわわにつけている。
 折しもその日は昼過ぎから雪が降り始めた。今年、江戸に初めて降る初雪だった。
 舞い散る雪の中、豪奢な女駕籠が木檜藩邸に横付けされた。付き従う奥女中が恭しく引き戸を開けると、中から降り立ったのは紫の被布姿の女人であった。
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