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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
対面は来客用の座敷で行われた。母を待たせてはならぬと政務も途中で放り出し、嘉宣は勇んでやってきた。
むろん、表情に出すのはあまりにも情けないので、極めて冷静にふるまった―つもりだ。
だが、春瑶院は嘉宣の沸き立つ胸中など頓着する様子はまるでなかった。
「母上さまがわざわざお越し下されるとは、思いも掛けぬことにございます」
親子とはいえ、今は嘉宣が藩主であり、木檜氏当主である。従って、嘉宣が上座に座り、春瑶院はやや離れて下座に位置する。
むろん、表情に出すのはあまりにも情けないので、極めて冷静にふるまった―つもりだ。
だが、春瑶院は嘉宣の沸き立つ胸中など頓着する様子はまるでなかった。
「母上さまがわざわざお越し下されるとは、思いも掛けぬことにございます」
親子とはいえ、今は嘉宣が藩主であり、木檜氏当主である。従って、嘉宣が上座に座り、春瑶院はやや離れて下座に位置する。