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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「そこまで、この母に言わせるおつもりか。あの橘乃なる女子、聞けば、稀代の妖婦と申すではありませぬか。下級藩士の娘の分際で殿のご寵愛を良いことに、奥向きで好き放題のし放題だと専らの噂にございますよ。あまつさえ、殿は橘乃の色香に溺れ、政務を放り出し、一日中、橘乃と寝所で淫らな行いに耽っておると下屋敷の方まで聞こえて参ります」
「それは」
 嘉宣が口ごもると、春瑶院は勝ち誇ったように笑みを刻む。
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