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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「母上はつくづくお気の毒なお方だと申し上げました。母上は何かあれば、すぐに身分、身分と仰せになる。さりながら、その気位の高さゆえに、父上のお心が母上から離れていった最大の原因だとは気付いてはおられぬ。出石十万石の出自を鼻にかけ、事ある毎に当家を侮った物言いをなされた。母上は、その報いをお受けになったのです。私は、今なら判る。父上が何故、母上の許を訪れようとせず、他の女人たちの許へ通い続けたのか、父上のお気持ちが判るのです」