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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 パシッ。乾いた音が鳴った。
 春瑶院は怒りと屈辱に身を震わせながら、息子であるはずの男を眺めた。
 母に生まれて初めて頬を打たれた息子は、まるで打たれたことなどなかったように平然と端座している。
―これが、私の子、私が産んだ息子?
 春瑶院の眼に、一人の男の貌が甦る。
 端整な面立ちの貴公子、文武両道に秀でた美丈夫。初めて見たときから、若かった彼女はその男に夢中になった。
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