この作品は18歳未満閲覧禁止です
妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
腹の子は男の子だ。何故か、不思議と橘乃にはその自覚があった。他人が聞けば、生まれる前から益体もないと笑われるだけだろうが、橘乃には根拠はないけれど、ある確かな予感があった。
男子を生めば、橘乃の立場は盤石となる。嘉宣には正室はいない。ゆえに、嫡子を生んだ橘乃が世継の生母〝お袋さま〟としての尊崇を受けることになるだろう。
あと少し、もう少し待てば、すべては完了する。邪魔者を消せば、後は月が満ち、この子が生まれ出てくるのを待つだけ。