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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 最初は正直、焦った。幾ら暗殺を唆しても、嘉宣はなかなかその気にならかった。その迷いに、橘乃は、嘉宣の母親に対する相反する感情が隠れていると見た。迷いは即ち、嘉宣の母への愛情だ。
 だが、半月ほど前、春瑶院が突如として上屋敷を訪問して後、嘉宣の態度が一転した。
 画策したわけでもないのに、馬鹿な女は自分の方からのこのことやって来た。そのお陰で、渋っていた嘉宣がとうとうその気になってくれたのだ。
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