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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「本当によろしいのですね」
 嘉宣と同じく影の消えた闇を見ていた橘乃が言った。
「何を今更。それに俺が今になって止めろと止め立て致したところで、そなたが気を変えるとでも?」
「フ」
 橘乃の花のような唇から吐息と共にかすかな笑い声が零れ落ち、闇に溶ける。
 そう、何を躊躇うことがあるの?
 自分の身は、愛しい者たちの身は自分で守らなければ。
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