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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 あの女を殺して、今度は私がこの(木)国(檜)の母となる。
 椿の紅を思わせる橘乃の艶やかな唇が笑みの形を象る。
 ふと、椿の樹が植わった繁みの向こうで小さな物音が聞こえた。
 傍らの嘉宣が鋭い一瞥をくれる。
「何者ッ」
 誰何の声を投げたが、当然ながら、応えは返らなかった。
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