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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 黒々とした闇は彼方まで無限に続いてゆくように見える。ふいにその果てない闇に身体ごとすっぽりと呑み込まれるような錯覚に囚われ、橘乃は小さく首を振る。
 今は怖じ気づいてなどいる場合ではない。
 橘乃は嘉宣に寄り添うようにして佇み、闇に沈む紅椿をいつまでも眺めていた。
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