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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
 琴路という名に聞き憶えがある。そういえば、琴路というのは、嘉宣の側室の一人ではなかったか。側室とはいっても、まだ御子もあげてはおらず、橘乃が新しく召し上げられてからというもの、既に嘉宣に忘れ去られて久しいと聞いている。
 が、その側室ともあろう者が何故、伴も連れず、しかも身を隠すようにして春瑶院を訪れてきたのか。
 春瑶院は浮かんだ疑念を表には出さず、声をやわらげた。
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