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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
 部屋の外には四六時中、見張りの侍が二人もしくは三人ついている。彼等がひそひそと小声で囁き合っているのを、橘乃もたまに耳にすることがあった。
―流石に殿を色香で惑わし、国を傾けようとした怖ろしき女子だの。
―されど、儂(わし)には、家中で取り沙汰されるほど稀代の妖婦には見えぬがのう。儚げな風情の手弱女(たおやめ)ではないか。
―それそれ、そこが曲者よ。あのように虫も殺さぬ大人しげな顔をして、寝所では殿を惑溺させた怖ろしき妖婦だからのう。
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