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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
母が遠い人なのとはまた、別の意味で父も彼にとっては手の届かない存在だった。次々と違う女を侍らせ、子をなしていったのは良かったが、父はけして真の意味で〝父親〟になろうとはしなかった。生まれ落ちた我が子に一切の関心を示さず、父はひたすら政にのみ己が情熱を注いでいった。
恐らく、だからこそ父は〝木檜藩中興の祖〟と領民や家臣からも慕われたのだろう。確かに為政者としては優れていたのかもしれないが、その反面、肉親に対しては冷たい男であった。