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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
要するに、嘉宣は両親の愛情など欠片(かけら)ほども与えられず、この歳まで生い立ったのである。
それはともかく、嘉宣は脚繁く姉の許に通う分、姉に仕える侍女たちの顔は皆、見憶えている。少なくとも、その中に季節の花を飾るような風雅を解する者はいないはずだ。
これがあの母であれば、年中花を絶やさぬようさぞ口煩い―もっとも、それが大名家では常識といえたが―のだろうが、姉は大らかというか、いささか身辺を飾ることにかけては構わなさすぎるのだ。