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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
 江戸の冬は冷える。しかも、今年はどういうわけか雪が多かった。雪が降れば、夜には更に寒さも厳しくなろう。この寒さが腹の子に障るのではないか。
 自分の身より、身重の橘乃の身が案じられてならない。
 閉じ込められている部屋は板の間で、小さな手焙り一つでは殆ど用をなさない。それほど寒かった。じっとしていると、手や足の先が痺れてくるほどであった。
 嘉宣は庭に面した障子戸を開け、庫裏の庭を眺めている。
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