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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
 父嘉達が亡くなったのは丁度、二年前のこの季節であった。まだ四十一歳の、働き盛りの歳である。死因は心ノ臓の発作で、さして苦しむこともなく呆気ないほど早く息を引き取った。
 姉の縁談が本決まりになって、ひと安心したのかもしれない。我が子には極めて関心の薄かった父が唯一、親らしい熱心さと情を見せたのがこの姉のために嫁入り先を決めることであった。
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