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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
「殿、私どもは思えば親の愛情や家族の絆というものには一切無縁に育ちました。お亡くなりあそばしたお父上も今は下屋敷にお住まいの母上も、お二人共にご自分の血を分けた子だというのに私たちを顧みることもなく―。殿、今からでも遅くはないと私は思うのです。子どもの頃に作れなかった家族、その絆というものを、私は嫁いでゆく彼(か)の地で新しく作ってゆこうと存じます。
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