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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
「橘乃―」
 呟くと、
「橘と書いて、〝きつ〟と読ませます」
 鈴を転がすような声が実に心地良い。
「橘か、良き名だ」
「お賞めにあずかり、恐悦に存じます」
 橘乃と名乗った少女はもう一度平伏すると、静かに立ち去っていった。
「随分とあの娘のことをお気にかけておいでですのね」
 輝姫が笑いながら言う。
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